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Safety of Switching from a Vitamin K Antagonist to a Non-Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulant in Frail Older Patients with Atrial Fibrillation

CirculationよりFRAIL-AF trialです。ESCのHotlineでの発表と同時掲載。

 

オランダ、多施設共同ランダム化比較試験
75歳以上かつ、8つあるオランダ血栓症サービスによるINRガイドのワーファリンコントロールを受けているfrailの患者(Groningen Fraility Indicator3以上)が対象。
弁膜症性心房細動(機械弁、MS)およびeGFR30 以下は除外。
VKA継続(目標INR 2.0-3.0) or INRが1.3以下になってから適切なNOAC開始(当初は2.0だったが出血イベント多く、変更となった)しフォローアップ。
Primary outcomeは出血イベント(major or clinically relevant non-major(CRNM)bleeding)。大出血基準はISTH出血基準を用いた。

・CRNM bleedingとは大出血の基準を満たさないが、①対面での診察を要する②医療専門家による医療介入を必要とする③入院または治療レベルの引き上げを要する いずれかを満たすもの。
Secondary endpointsはall cause mortality,major bleeding,CRNM bleeding、血栓塞栓性イベントやその出血イベントの複合、脳卒中

ITT解析。

結果:
・662名がVKA→NOACへ切り替え、661名がINRコントロールされながらVKA継続。平均年齢は83歳、GFIスコアの中央値は4。
・eGFRはほぼ同様、抗血小板剤の併用も変わらず。NOACの内訳としてはrivaroxabanが最多(約半数)。
・DOACへの切り替えがVKA継続に対してPrimary outcomeを改善するという仮説で開始されたが、163件のPrimary outcome events(NOAC群101件(15.3%)、VKA群62件(9.4%))が観察されたため、
無益性を理由に参加者全員の組み入れとfollowupを行うことが中止された。
・Primary outocomeのHazard ratioは1.69(95% CI, 1.23 to 2.32; P=0.00112)。消化器系、泌尿器科系の出血が多めであった。またランダム化から100日以降に切り替え群で出血が増加する傾向であった。

・年齢、性別、腎機能やフレイルスコア等のサブグループ解析でもこの切り替え群で出血増える傾向は変わらず。NOAC間でも傾向は同じ。
・Secondaryはmajor bleedingのHR1.52、CRNM bleedingはHR1.77。血栓塞栓症はHR1.30、all cause mortalityはHR0.96であった。

 


今回の結果の理由として①患者層がVKAに忍容性のある集団であったこと、②オランダはフレイル高齢者へのINRガイドVKA管理のインフラが充実(自宅に訪問してINR測定)していたこと(∴INR管理が不安定な患者については今回のtrialから結論を出すことはできない)
等。血栓塞栓イベント、大出血単独、脳卒中はイベント発生率が両群とも低く、今回のtrialからそちらのイベントに対する明確な結論を出すのは難しいと。

 

個人的にはNOACはワーファリンに対して出血イベント抑制に優れ塞栓イベント非劣勢という認識で、高齢のADL低下傾向のAF患者には毎月のINR管理で来院するのも大変だろうとNOACにswitchすることもありましたが、それが覆る報告。今回の結果からはVKAで問題なく管理できている高齢のFrailの心房細動患者にはあえてNOACに切り替えることは推奨されないってことになりますね。

 

Safety of Switching from a Vitamin K Antagonist to a Non-Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulant in Frail Older Patients with Atrial Fibrillation: Results of the FRAIL-AF Randomized Controlled Trial | Circulation (ahajournals.org)