pato loco

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A Placebo-Controlled Trial of Percutaneous Coronary Intervention for Stable Angina

NEJMより"A Placebo-Controlled Trial of Percutaneous  Coronary Intervention for Stable Angina".

AHA late-breaking sessionの第一弾、ORBITA2試験です。

イギリス、double-blind・ランダム化比較・プラセボ対象の多施設試験。

狭心症症状を有し、非侵襲的画像診断または侵襲的冠動脈生理学的検査により虚血の証拠を有し、1血管以上の冠動脈狭窄が証明された患者を1:1でPCIとsham手術に振り分けた。ランダム化と同時に狭心症薬が中止された。抗狭心症作用のある降圧剤は代替薬に切りかえを行った。DAPTや高用量スタチンなどは継続された。患者はスマホアプリを用いて症状の有無を毎日報告(2週間)。トレッドミル運動負荷、ドブタミン負荷エコーで評価、そののちPCI or sham手術施行し、再び12週間のアプリでの毎日の症状報告。その後再度トレッドミル、DOB負荷エコーで評価を施行。
患者が観察期間中に狭心症状を訴えた場合、あらかじめ規定された治療プロトコールに従って抗狭心症薬による治療が開始された。PCI群では多枝病変の場合、全ての病変が治療された。

primary endpointは狭心症症状スコア(症状の回数と抗狭心症薬の数を数値化したもの)。secondary endpointは狭心痛の頻度、抗狭心症薬の開始と増量、トレッドミルでの運動耐用能。CCSスコア、QOL、DOB負荷心エコー。
ITT解析。

 

【結果】
2018年から2023年まで、301名の患者を登録。151人がPCI、150人がsham手術。平均年齢64歳、8割男性。狭心症と診断されてからの期間の中央値は8ヵ月。8割が1枝病変。FFRは平均0.62程度。
12週間のフォローアップで、狭心症症状スコアはPCI群で2.9点、placeb群で5.6点(オッズ比 2.21 95%CI 1.41~3.47;p<0.001)であった。CCSスコアも平均1.7(PCI)→0.9(placebo)に改善(OR 3.76,p<0.001)、運動耐用能も60秒ほど改善(p=0.008)した。


PCI betterな結論ということで会場では拍手喝采でしたが、後で冷静になると解釈はなかなか難しいです。現状ガイドラインでは安定(慢性)冠動脈病変に対してはOMT後も症状が改善しない場合PCIという方針ですが、2017年のORBITA試験ではOMT下でのPCIは運動耐用能の改善に寄与せず(Percutaneous coronary intervention in stable angina (ORBITA): a double-blind, randomised controlled trial - The Lancet)という結果でした。ただOMT下ではPCI狭心症状改善効果を評価するのは難しいという理由で、今回はこのような研究デザインに。PCIの症状改善効果が明らかになりましたが、ORBITAの結果を事前知識として持たずに結論だけ聞くと今更感が否めません。実臨床ではOMTを中止するというシチュエーションがあり得ないのもあります。βBの忍容性がない人はたまにいますが...。本文中にはthe two trials(ORBIA & 2) indicate that the recommendation to restrict PCI to patients with inadequate response to antianginal medications may be inadvertently selecting the cohort with the least to gain.とありますが、この結果が逆風気味のPCIの立ち位置を変えるかは時差ぼけ気味の頭ではよくわかりません。ちなみにトレッドミル60秒改善というのは抗狭心症薬単剤full doseによる改善時間とほぼ同じとか。

A Placebo-Controlled Trial of Percutaneous Coronary Intervention for Stable Angina | NEJM