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Asymptomatic Patients With Brugada ECG Pattern: Long-Term Prognosis From a Large Prospective Study

Circulationより"Asymptomatic Patients With Brugada ECG Pattern: Long-Term Prognosis From a Large Prospective Study"。

Brugada症候群(BrS)は有症状(CPA、VFの既往や失神歴)かつタイプ1(=coved型)心電図が記録された(自然発生or薬剤負荷)場合、ICD植え込みclassⅡa以上(日循ガイドライン)。無症候性かつ自然発生タイプ1の場合、リスクを考慮してEPSだが、EPSはどこでもできる検査でもなく、この場合外来でも説明で悩む場面が多い。
この研究ではBrSECGパターンを有する無症候性患者の大規模集団における不整脈リスクを評価し、EPSの役割に対しても検討した。

イタリア、2001年~2022年までの、自然発生または薬剤誘発性のtype1 BrECGを有する患者を登録。構造的心疾患はエコーで除外。追跡期間が2年未満、キニジン治療中の患者は除外。
最終的に1149人がenrollされた。患者には特定の薬物・暴飲(酒)暴食の回避・発熱の速やかな治療が勧告された。薬物誘発性のtype1ECG患者には、少なくとも1年に1回の心電図と、可能であればHolter心電図が行われた。
自然発生型またはフォローアップ中にtype1ECGがholter等で認められた薬物誘発型患者には、EPSが行われた。

患者は少なくとも年1回外来で評価を受け、可能な限りホルター心電図まで評価された。他の明らかな理由がない突然死は不整脈イベントとみなされた。

【Results】
・初診時の平均年齢は45±14歳、74%が男性であった。自然発症のtype1BrECG(12誘導、holter心電図)を認めたのは539人で、残り610例は薬物誘発でのみtype1 ECGを認めた。薬物誘発性と診断された患者のうち72人(約12%)がholter心電図により自然発症型と診断された。
最終的に自然発生型と診断された患者のうち、13%は当初は薬物誘発性とされていた。
・自然発症型には前例EPSが提案されたが、実施されたのは339例(63%)。103例(30%)がEPS陽性であった。計90例にICDが植え込まれた。70%はEPS陰性であり、27例にICDが植え込まれた。EPS拒否の患者のうち11例(5.5%)にICDが植え込まれた。S-ICDが植え込まれたのはICD例のうち9%。
薬物誘発型にも患者希望・臨床医の判断で35例のICD植え込みが行われた。
・Follow up期間の中央値は6年、計17の不整脈イベントが起きた(1.5%,0.2% person years)。自然発生型16例、薬物誘発型1例でありイベント発生率は0.4% peryear vs0.03% peryear(p<0.0001)。
薬物誘発性としてfollow up中に突然死した1例は、ホルター心電図が行われたことはなかった。35例の薬物誘発性に対してICDが植え込まれた症例では不整脈イベントは認めなかった。
多変量ロジスティック回帰分析で自然発生型type1 心電図と不整脈イベントの発生に有意な関連を認めた。

・EPSについて:EPS陽性の103例のうち、ICD適切作動を受けたのは7例(6.8%)。EPS陰性の236例のうち、4例(1.6%)に不整脈突然死を認めた。単変量、多変量ロジスティック回帰分析ではEPS陽性が不整脈イベントの発生の有意なリスク因子であることが示された。EPS陽性と陰性のイベント発生率はそれぞれ0.7% peryear vs 0.2% peryear(p=0.035 HR,3.4)。
・ICD装着による合併症(リード不全、誤作動、感染)の発生率は3% peryearであった。

・結論/Discussion
真の薬物誘発性 type1 BrECG(一肋間上心電図+ホルター心電図で自然発生型が否定)のイベント発生率は極めて低い(0.03% peryear)。自然発生型はこれに比べて有意に高くなる(0.4% peryear)。
EPSが陽性である場合も陰性である場合に比べてイベント発生率は有意に上昇する。ただ、EPSも偽陰性はありEPS陰性例でも突然死はある。
不整脈イベントは診断から数年で発生しており、BrECGにおいてはindefinite follow-upが必要である(薬剤誘発性であってもホルター等で自然発生がないかcheckが必要)。
ICDは突然死予防の一般的な方法だが植え込みによる合併症もある。NNTは5年で50人程度であるが植え込みは患者の意思など様々な要因で決定され、リスクカットオフを定めるのは難しい。S-ICDやキニジンも長所短所がある。アブレーションは今後期待される治療法とのこと。

無症候性のブルガダ症候群は概ね日循ガイドライン通りの対応でよさそう。でも無症候性の薬剤誘発性ってそんなにいるんでしょうか。そもそも失神歴ないと非covedには負荷試験やらないような。。イタリアでは失神歴のない健診で引っかかったsaddleback型とかに入院でサンリズム負荷してるんだろうか。

 

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