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Stimulates Short-Chain Dehydrogenase/ Reductase Proteins to Alleviate Heart Failure Independent of Mitochondrial Protein Deacetylation

Circulation 2023/11/15より"Stimulates Short-Chain Dehydrogenase/Reductase Proteins to Alleviate Heart Failure Independent of Mitochondrial Protein Deacetylation"

Background:不全心ではミトコンドリア障害(FAO障害、OXPHOS障害)が起きており、PGC1α/PPARα/RXRα signaling complexesがdownregulationされている。これに対する治療は明らかではない。mito障害ではATP産生が阻害されるが、同時にNAD+/NADHの不均衡も起きている。これは様々な酵素反応にも影響する。細胞内のNAD+レベルを上昇させることは不全心において心機能を改善させることが既報で述べられており、主にSirt3の活性化によるmitoPのde-acetylationによるものと考えられてきた。不全心においてNAD+の増加がSirt3の活性化によりタンパク質を脱アセチル化し、心不全進展を抑制するのかを研究することとした。

Method:vivoメインで、TACマウスにNAD前駆体であるNR(nicotinamide riboside)のIPを行った。Sirt3の働きを検討するためWT,SIRT3 KOマウスを使用した。

Results:NR投与でSIRT3KOの有無に関わらず、TACにより惹起された心機能障害や線維化が改善。NR投与によりWTではmitoPアセチル化改善していたが、Sirt3KO群では

亢進したままであった。TACにより低下したOCRやCox1,Nd1等の,mtDNA-encoded genesも発現上昇。また負荷によりNd1-Nd2,Cox3-Nd3等のミトコンドリアゲノムのRNA前駆体断片が増加していたことにより前駆体処理を行うリボヌクレアーゼP(RNaseP)の機能障害を疑い、そのサブユニット2(Mrpp2:Short-Chain Dehydrogenase/ Reductase活性を有する)をcodeするHsd17b10の低下を確認した。この低下もNR投与で救済された。次にTAC/sham心からRNAseqを行い、TACで低下しているSDR関連の遺伝子43を同定、KEGGpathwway解析とGO解析でレチノール代謝が関連していることを予想した。実際、組織レチノール濃度はNAD+/NADH比と有意な相関ありSDR活性低下によりレチノール蓄積を認めた。レチノール酸化物のレチノイン酸はRXRα(PPARαと複合体を形成する)の主要な内因性リガンドでありNR投与→レチノール酸化の改善により不全心ではtranscriptional activity of the PPARα/RXRα complexも改善すると仮定した。Pparα/RXR target genesはTACで低下、NRで改善し、GW6471によるPPARα/RXRαシグナル伝達複合体の阻害によりNRによる心不全緩和作用が消失した。

Summary:

①細胞内のNAD+を増加させることは、マウス不全心モデルにおいてミトコンドリア機能を改善させ、心不全を緩和する。

②その反応は従来考えられていたSirt3によりミトコンドリア蛋白の脱アセチル化とは無関係であり、SDR family proteinsの機能改善によるものの可能性がある。

③SDR proteinの機能障害はNAD+/NADH比を改善することで改善し、それによりレチノール酸化障害も緩和されPPARα/ RXRαシグナル伝達を活性化することでミトコンドリア機能を改善させる。

④不全心におけるOXPHOS障害はPGC1αを介したミトコンドリア生合成のdownregulationと考えられてきたがRNase P複合体によるミトコンドリアDNAの転写後プロセシングの障害によるものの可能性がある。

Stimulates Short-Chain Dehydrogenase/Reductase Proteins to Alleviate Heart Failure Independent of Mitochondrial Protein Deacetylation | Circulation (ahajournals.org)