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Rethinking False Positive Exercise Electrocardiographic Stress Tests by Assessing Coronary Microvascular Function

JACCより"Rethinking False Positive Exercise Electrocardiographic Stress Tests by Assessing Coronary Microvascular Function"。

Background:その偽陽性率の高さなどから近年は虚血評価でclass Ⅱb等、過去の検査法になりつつある運動負荷心電図検査。しかし近年は、冠動脈に狭窄のない微小血管狭心症(ANOCA)の概念が確立されつつあり、これまでCAGだけで運動負荷偽陽性とされてきた症例も存在するのではないかと推察される。そこでANOCAにおけるExercise electrocardiographic stress testing (EST)の臨床意義について再考した。

Method狭心症状を有し、下記のプロトコルによって冠微小循環を評価したEF>50%と心機能が保たれた患者を解析。除外基準は機能評価へのintorelance、CKD(eGFR<30)、高度弁膜症、ACS・再灌流の既往、心筋症、脚ブロック等。約30日後にトレッドミルBruce法にて運動負荷行い、虚血性変化が出た群(ischemic group)、出なかった群(nonischemic group)に分けて解析した。負荷終了基準は患者の希望のみ。

※機能評価とANOCAの診断

機能評価は左前下行枝に統一。FFR>0.80のみが今回の解析対象。CFR<2.5で内皮非依存性CMDと診断。さらにAch投与を行いAchFR<1.5を内皮依存性CMDと診断した。これによりCFR<2.5 and/or AchFR<1.5をCMDと定義。

Results:2021~2023年、160人がCAG & 機能評価を受けた。CAD等で除外されたため、ESTを受けたのは122名。さらに脚ブロック、運動耐用能なしなどで解析されたのは102名。32名がischemic group、70名がnonischemic groupの判断。

性別、年齢、基礎疾患、CCSや腎機能、BNP値や内服薬に差はなかった。Typicality scoreでTypicalなものはischemic群で有意に多かった(91% vs 73%)。Hb値もischemic群で有意に低め(13±1.2 vs 13.7±1.4)。FFR・CFR・HMR値に2群間で有意差なし。CMDと診断された症例はischemic群で100%、nonischemic群で66%。AchFRの値はischemic群で有意に低かったがこれは内皮依存性の微小循環障害(AchFR<1.5)がischemic群で多かった(97% vs 56%)ことによると推察される。運動負荷時間・負荷中の狭心症状については有意差なし。HR・DPはischemic群で高めであった。ロジスティック回帰分析の結果、Hb・AchFR・HRはそれぞれ独立して運動負荷心電図の虚血性変化と関連していた。

運動負荷心電図での陽性は内皮非依存性の微小循環障害に対しては感度40%,特異度77%であったが、内皮依存性の微小循環障害に対しては感度44%、特異度97%。CMD全体では感度41%、特異度100%であった。さらに今回のESTを閉塞性のCAD(従来の狭心症)の診断として用いると偽陽性率は31%となるが、CMDとして考えると偽陽性率は0%であった

Disscusion:運動負荷検査時の虚血性心電図変化と関連していたのはHbの低さ、心拍数の高さ、そしてAchFRの低さであった。これは冠血流の低下と心筋酸素需要の増大が虚血性心電図変化をもたらすという機序に矛盾しない。今回の研究はAchFRの低下(=内皮依存性CMD)が最も強力な運動負荷時の虚血性変化の予測因子であるとした初めての報告である。アデノシンによる血管拡張はcAMPを、Achによる血管拡張はcGMPを介しており、後者のほうがより生理的なNO-cGMP-プロテインキナーゼG経路を評価しており、今回の結果につながった可能性がある。運動負荷心電図は感度は高くないが、特異度は高い。種々の検査と組み合わせる必要はあるが、冠動脈CTで陰性の胸痛症例にESTを追加で行うことでより診断への手がかりが得られる・またはANOCAの治療効果判定に使用できる可能性がある。

これからの運動負荷心電図は従来の狭心症(冠動脈病変を持つ)を診断するものではなく、冠微小循環障害を含めた包括的な評価に有用かもしれない、という論調。最近NEJMの大規模臨床試験とかよりこういうのが読んでて面白いです。複雑でとっつきにくい微小循環にも少し理解が深まったかも。ただ日本のガイドラインとは少し判定基準が違う(日本はCFR<2.0)上、日本人はspasmも含めた概念なんですよね。AchFRは攣縮誘発とは無関係で、CMDの血管内皮依存性の有無を見る検査との理解なんですけど、あってますかね。

Rethinking False Positive Exercise Electrocardiographic Stress Tests by Assessing Coronary Microvascular Function | Journal of the American College of Cardiology (jacc.org)